徳川美術館

徳川美術館の展示ケース

この美術館で展示品を拝見する前に驚いた事、それは、展示ケースの内側に花が活けてあったことです。展示品は「湿気や温度の変化に敏感なもの」だから細心の注意を払う、と言うのが固定観念のように頭の中にあったので、びっくりしました。そんなことが出来るくらいに設備や空調関連には注意をされているのだと思います。しかも、花が活けてあるのは一か所だけではなく、ほぼ全館に散らばっていました。慣用句で「花を添える」という事がありますが、正に本物の花が添えてありました。そして、あくまでも添えてあるというポジションなので、展示品よりも自己主張していることはありません。見ることに集中してほっと息をつく場所にちょうど花がある、そんな印象を受けました。

 

白天目茶碗

 徳川美術館では、お武家さんらしく刀や鎧兜などの、いわゆる武士として戦っていた時の品の他に、茶の湯などの武士のたしなみに用いられていた品も多く展示されていました。単に武力だけでなく知略も必要だったのだなという事を実感します。この白天目茶碗、一見すると、とてもシンプルで、見る人によっては質素に映るかもしれません。ですが、いわゆる純白ではなく、かすかに緑を帯びた白い地はとても品の良い色で、全体にごく細かな黒い点が白さの邪魔をしないように散らばり、縁は金で縁取りが施されています。いわゆる当時の侘茶の薄暗い席で使うには、その白さは浮くことなくその場に馴染み、かつ、柔らかな白さでその場に存在していた事と思います。

 

青磁火変り大皿

このお皿を見た時はとにかくびっくりしました。大皿のちょうど半分がいわゆる青磁の青緑の釉の色、もう半分が橙色をしていました。火加減の関係でこのような色の出方になったと言うのはわかるのですが、見事にその色でお皿を二分していました。焼き物は焼き上がるまでその出来がわからないと言われますが、その見本のようなお皿だと思いました。ともすると、このお皿は失敗作とみなされて打ち捨てられていたと言う可能性だって十分にあったと思います。ですが今現在このように見ることが出来るという事は、このお皿になにがしかの価値(おそらく珍品としての価値だと思いますが)を見出した人々がいたからこそなのだと思います。まったく飾り気のない大皿ですが、並べてあった他のどの展示品よりもインパクトがありました。

 

初音の調度

江戸徳川の千代姫様が尾張の徳川家にお嫁に来た時の調度品が展示されていました。初音は源氏物語の帖の名前で、明石の君が娘に歌を送る話にちなんで、姫君の嫁入り道具の模様に仕立てているのだと思うと納得がいきます。そして、戦国の終わりの時代にもこういう形で源氏物語が読まれ、女性の教養のひとつとして欠かせないものだったのだと思いました。(当時の辞世の句を残すのが当たり前だったり、男性なら漢詩も残されているのでお武家様でも文学の教養は必須だったのでは思います)徳川美術館に源氏物語絵巻が残されているのもそのせいかもしれません。この時代は、大きな戦も終わり、戦略としてではなく、純粋に、文学や芸事をたしなむことも多かったのではないでしょうか。私が見たのは、硯箱と香のお道具でした。どれも繊細金を主にした繊細な蒔絵が施されていて、こんな嫁入り道具を持っていらっしゃる女性はを持たされるだけの愛情と、教えをご両親から受け継いでいると言う証なのかもしれないと思いました。

 

唐人相撲装束

のちに能や狂言として発達する、武家の猿楽。展示されていたのは江戸中期のもの、題のとおり日本の相撲取りが皇帝を含めた唐人と相撲を取ると言うシンプルな話です。展示室には能舞台が設えてあり、舞台の上に数人分のお面から装束一式、他の展示ケースにも面や装束が展示されていました。唐人と言うからには、日本人ではなく、中国風の人物を表す面なのだと思うのですが、ちょっと人間離れしてはいないかしらと思うお面があり、江戸中期のものなので鎖国中という事もありますが、「外人のイメージ」と言うのが幕末まで変わらないような気がしました。装束は明らかに柄や生地が日本製でないのが並んでいて鎖国中にこれだけ集めて衣装にして狂言として楽しむなんて徳川だからこそできた贅沢なのかなと思いました。今まで抱いていた能や狂言とは全く異なる物でとても興味深かったです。

 

By Satoko Oct -Nov 2017


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