萩原朔太郎記念 水と緑と詩のまち 前橋文学館

1 詩人萩原朔太郎を知る

常設展示では朔太郎の愛用品や原稿、親交のあった人物とのやり取りを見る事ができます。そこでは、朔太郎が多方面の趣味を持ち、なおかつその趣味にこだわりを持っていたことがうかがえます。当時まだ新しい技術だったカメラの中でも、ステレオカメラを愛用していました。このカメラは多方向から撮ることで写真が立体的又は奥行きがあるように見えるもので、実際にその中の一つを見る事が出来ます。現在の3D映像と似ています。彼が撮っていたのは前橋の風景で、詩に残すように、写真も残していたのかもしれません。
また音楽にも造詣が深く、マンドリンの師事もするほどでした。資料館では、マンドリンで作曲した譜面や、その曲を演奏した音を聞くこともできます。それまでの日本の歌には五と七のリズムがあります。西洋の旧形態の詩(ソネット)にも、音節(シラブル)の数や韻を踏む等の踏襲されてきたリズムがあります。そんな西洋も19世紀には散文詩や自由詩と言う新しいジャンルを開きますが、詩と言う文学の中でもとみに音律に重点を置く分野では音楽と言葉は切っても切れないものだったのだと思います。

 

2 多角的に詩を捉える

 前橋文学館の企画展示は、そのテーマにまつわる文献や資料だけでなく、そのテーマに沿って詩をどのように表現するかと言うところにも力を入れています。詩は行ってしまえば文字媒体で、直筆の原稿は勿論貴重な資料でこちらの文学館には多数所蔵されています。しかしそれを提示するだけでなく、朗読して音を介してみたり、現代美術のようにして目で詩の世界に入っていく事ができます。テーマごとに趣向も凝らされているので、訪れるたびに企画展には驚きがあります。また、前橋文学館は曲線と直線の合わさった不思議な形の近代建築なのですが、その壁や小窓には詩がちりばめられています。遠くまで見渡せる窓の下には「榛名富士」、開口部から細い光の入る場所には「極光」、階段を上って入口の方を振り返ると「帰郷」など、その配置にその文言があって然るべきと思わせてしまうほど、絶妙です。内装が白を基調にしており、まるで紙を思わせる壁に黒で書いてあるのでなおの事そう感じるのかもしれません。