北澤美術館

20代後半のときに勤めていた会社の社長の自宅で新年会をすることになり、社長宅にお邪魔し、そこで初めてエミール・ガレのガラス細工と出会い、完全に心を奪われました。あまりに熱心に見ていたので、社長が「アールヌーヴォーのガラス細工」の本を貸してくれました。私は新年会どころではなく、その本に夢中になっていました。観れば観るほど心を奪われ実物を見たいと思うようになり、社長に実物をもっと見たいのですがどうすれば良いかと質問したところ、長野県諏訪市の北澤美術館を紹介してもらいました。私は東京に住んでいたのですが、高校生のときに父の仕事の関係で長野県松本市に住んでいたので、年に2,3回は松本を訪れており、松本市の隣の諏訪市は自分にとってはなじみのある場所でした。その半年後、松本に行く機会があったので、松本に行く途中に北澤美術館を訪れました。オーバーかもしれませんが、ガレのガラス細工は夢にまで見たほどでしたので、常設展示だけで大満足でした。私にとってのアールヌーヴォーのガラス細工の魅力はそのモチーフです。特に、昆虫や植物をモチーフにしたもので、そのなかでも好きなのが「蜻蛉」をモチーフにしたものです。ガレの作品で蜻蛉が短い寿命を向かえ静かに池に落ちていくシーンを描写したものがあるのですが、「死」というネガティブな状況にもかかわらず、何色もの溶けた色ガラスを使いどこか暖かい雰囲気を醸し出していて、まさに「もののあはれ」とはこういことを言うのだと、自分なりに理解しました。後日知ったのですが、エミールガレは浮世絵などの日本美術からかなり影響を受けていたとのことなので、私たち日本人の心に響くものがあるだと思います。興味のある方は是非、北澤美術館を訪れてみてください。
By SSJP40代男性
2015/5掲載