サントリー美術館・展覧会・イベント

暁斎のたゆまぬ努力に着目 「河鍋暁斎 その手に描けぬものなし」
河鍋暁斎の作品というと、滑稽、諧謔、皮肉、風刺、戯れ、ユーモア……といったイメージが強いですが、今回の展覧会で着目したのは「努力」や「ストイックさ」です。「日課観音図」や「暁斎絵日記」「惺々暁斎画帖」などの作品から、古画の研究を怠らず、日課として観音や天神を描き、絵日記をつけるといった、暁斎のたゆまぬ努力がよく表れていました。個人的には第4章の「戯れを描く、戯れに描く」で取り上げられた面白おかしい作品に一番興味をひかれましたが、こうした努力がなければ、面白おかしく、かつ完成度の高い作品ができなかったと思います。作品に見られるような滑稽さやユーモアは、努力に裏打ちされている、といっても過言ではないでしょう。
Lisa Aoki

 

初めて知ることがたくさん 「扇の国 日本」
扇そのものや扇をあしらった工芸品など、江戸時代までの扇全般を取り上げた展覧会です。
この展覧会では作品を鑑賞した以上に、扇に関する知識が得られたような感じでした。折り畳み式の扇は日本発祥であること、現在のような両面張りの扇は中国で考案されて日本へ逆輸入されたこと、古い扇を屏風に貼るのは保存と鑑賞の両方の目的があったこと、など初めて知ることがたくさんありました。
さて、この展覧会に行って、2016年に東京・押上の郵政博物館で開催された「簡易生命保険誕生100年記念・扇面原画展-竹内栖鳳から東山魁夷、平山郁夫まで-美をあふぐ 華麗なる巨匠たちの扇の世界」を思い出しました。こちらは大正・昭和期に事業功労者への贈呈用として制作された扇の原画の展示です。改めて振り返ってみると、扇が贈答品として大量に流通したことや、江戸時代に著名な絵師たちがこぞって扇絵を描いたことなどが、近現代に受け継がれたように思います。
Lisa Aoki

 

薬師如来坐像および両脇侍像が圧巻 「京都・醍醐寺 真言密教の宇宙」
タイトルの通り、京都・醍醐寺にある美術作品や各種資料を一堂に集めた展覧会です。全体としては、醍醐寺という寺院そのものに焦点を当てた展示内容だったといえます。
一番の見どころは、何といっても国宝・薬師如来坐像および両脇侍像でしょう。4階の展示室から順路が始まり、階段を降りて3階の展示室に向かうと、目の前に待ち受けているのです。高さ数メートルはあると思われる大きな仏像の荘厳な姿を目にすると、思わず手を合わせて拝みたくなるような、敬虔な気持ちにさせられます。国宝に指定されているだけあって、圧倒的な存在感とものすごい迫力を感じました。順路のちょうど中ほどに一番の見どころを置くというのも、よく工夫された演出だったと思います。
このほか、やはり国宝の五大尊像は、独特なポーズや手足の動きが印象的でした。また3階の展示室の資料からは醍醐寺と室町幕府や朝廷とのつながりがわかり、現代の政治との違いを改めて認識しました。
ところで個人的に着目したのは、4階の展示室に展示されていた醍醐寺の鳥瞰図と、4階から3階へ向かう途中に展示されていた、醍醐寺の写真パネルです。鳥瞰図は境内の様子を忠実に再現していてわかりやすく、写真は四季折々の様子をよく伝えていました。見ていると実際に醍醐寺に行ってみたくなります。

 

学校の教科書だけでは学べないものがたくさんあった「寛永の雅」
江戸時代前期、17世紀前半の寛永年間に作られた作品を中心とした展示です。4階の展示室には17世紀前半に作られた代表的な作品と、後水尾院を中心として栄えた宮廷文化にまつわる作品が展示されていました。3階の展示室には小堀遠州の好みの茶道具、野々村仁清が製作した陶磁器、そして狩野探幽による絵画が展示されていました。全体の構成がわかりやすく、公家や武家といった身分や、絵画・陶芸・書道・茶道といったジャンルを超えて、寛永という時代に醸成された文化を大局的にとらえられるようになっていました。学校の教科書だけでは学べないものもたくさんあったと思います。
特に印象に残ったのは、仁清による落ち着いた作風の陶芸作品です。それまで仁清というと、華やかな色絵というイメージがありました。でも華やかな作品ばかりでなく、顧客の注文に応じて落ち着いた感じの作品も多く作っていたところに、職人としての仁清の一面を見たような気がします。

 

華やかな作品が多い一方、衝撃的な作品も 「ガレも愛した―清朝皇帝のガラス」
中国・清時代のガラス工芸品と、その影響を大きく受けたフランスの装飾芸術家、エミール・ガレの作品を中心とした展覧会です。4階の展示室には中国の作品、3階の展示室には中国の作品とガレの作品、そしてエピローグとして清時代に作られた鼻煙壺(嗅ぎ煙草を入れる小さな壺)が多数展示されていました。全体的に華やかで凝った作りの作品が多く、見る人の目を楽しませてくれました。清王朝の栄華がしのばれます。
ガレの作品は、清時代の作品をそのまま再現したようなものもあれば、中国の作風を昇華させて自分なりの世界観を表現したようなものもありました。いずれにしても、ガレの技量の高さがうかがえます。
ところで衝撃的だったのは、「クリズリング」という、成分バランスの問題から生じるガラスの病気です。進行すると透明性や輝きが失われ、最終的には崩壊に至るそうです。クリズリングが進んだ作品が実際に展示されていましたが、もともと藍色だった器がクリズリングのために変色している様子は、見ていて何とも哀れな感じがしました。

 

琉球国王尚家関係資料が圧巻 「琉球 美の宝庫」
とにかく見ごたえのある展覧会でした。4階の第1展示室に染織と絵画、3階の第2展示室に琉球国王尚家関係資料、第3展示室に漆芸および鎌倉芳太郎氏による記録を展示するというわかりやすい構成で、内容も非常に充実していました。
なかでも圧巻だったのは、国宝に指定されている琉球国王尚家関係資料です。とりわけ「王冠(付簪)」は色鮮やかな石がたくさん散りばめられていて、豪華で風格があり、展覧会の目玉といえるだけの圧倒的な存在感を誇っていました。この王冠は絵画や写真にも残されていることから、大切に受け継がれていたことがわかります。また華やかな色合いの衣裳や朱塗りの盆に杯や食籠などが載った「美御前御揃」なども、国宝にふさわしい美しさと品格がありました。
他のジャンルの作品も、本土にはない、琉球で生まれた作品ならではの魅力がありました。力強い色味の紅型や落ち着いた趣のある絣、那覇港を活き活きと描いた屏風や中国の影響を強く受けた絵画、大胆さと精巧さを併せ持ち、ユニークなデザインの漆芸品などは、琉球の気候風土やそこに住んでいた人々の気質を反映しているような感じがします。

 

Lisa Aoki 2018


学校の教科書だけでは学べないものがたくさんあった「寛永の雅」サントリー美術館(東京都港区)関連ページ

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